神田外語大学同窓会

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地道な活動の甲斐あってスポーツ選手の通訳に!

みなさんこんにちは。2011年国際言語文化学科ポルトガル語専攻卒業の勝田 道徳です。現在柏レイソルというサッカーチームでポルトガル語通訳として活動しています。通訳という仕事は、それぞれの環境において自分の感情を挟まず的確に伝えられるかがポイントになりますが、今回はサッカーチームの通訳を通じて得た経験をもとに、的確さだけではない通訳の役割について触れたいと思います。

突然の出会い。でも実は必然?!

ある日、職場の昼食時にその電話は鳴りました。電話に出ると、以前お仕事をご一緒させて頂いた某通訳さんの声でした。

「もしもし。〇月〇日と〇日の土・日は空いていますか?実は・・・」

内容は、東日本大震災復興支援2013JリーグスペシャルマッチのJリーグ選抜の通訳ができないか?というものでした。聞いたとき自分の耳を疑ったのは言うまでもありません。

「是非やらせてください!」

スポーツ選手の中でもプロサッカーの通訳を目指していた私にとっては興奮する気持ちを抑えることに必死になった瞬間でした。

そもそもスポーツ選手の通訳を目指したきっかけですが、大学3年次の交換留学でした。留学先はサッカー大国ブラジル!毎日サッカーに触れることで自然と自分の中で「サッカーチームの通訳」をやりたいという気持ちがはっきりしたのです。しかし、スポーツ関連の通訳はかなりの狭き門。卒業後は一般企業に勤めながら、実現のチャンスを探す日々。平日は勤務先の業務に従事し、アフター5と土日時間を活用してポルトガル語の勉強を継続する傍ら、可能な限り外に出て経験を積みながら語学力を維持していました。

ですので、オファーの電話はまさに「棚から牡丹餅」である一方、冷静に考えてみると、これは継続的な行動から生まれた必然だったのでは・・・と自分では解釈しています。夢を諦めなかった自分へのご褒美ですから(笑)

「日々の準備」が大きなチャンスを生む

この出来事は「日々の準備の大切さ」を痛感させてくれました。これは能力の訓練を継続する事だけではなく、夢に向かう心の準備も同じくらい重要になってきます。いつ何時にビッグチャンスが降ってくるのかは誰にもわかりませんし、そのチャンスは人生に一度かも知れないのです!

誰でも心当たりがあるのではないかと思いますが「もしも~だったら・・・」という、いわゆるタラレバの罠に陥らない為にも、常にチャンスを逃さないアンテナを張って準備をしておく必要があるのではないでしょうか。 

どんな経験も無駄にはならない

私は大学在学中からボランティア活動を始め様々な挑戦に触れる機会に恵まれました。「出会い」と「挑戦」の全てが血となり肉となり私の中で生きています。その大半は直接的に自分の目標に繋がりにくいかもしれません。しかし、その活動は決して無駄ではないのです。どうぞ皆様も自分の歩んできた道を再度振り返って、自分自身を讃えてあげてください。自分自身を認めてあげるのもプロ(社会人)として大事な資質だと思うのです。

サッカーチームにおける通訳がなす役割とは

Jリーグに加盟しているほぼ全チームがブラジル国籍の選手と契約しています。助っ人外国人と呼ばれる彼らのチームでの主な役割は、活躍してチームを勝利に導く事です。そしてその任務の裏には必ず「通訳」という存在がいます。

通訳が遂行する業務は大きく二つに分けられます。

・グラウンド内での通訳(練習内容や試合中の通訳)
・グラウンド外での通訳(日々の生活サポート)

細かい事はまた別の機会にお話しできればと思いますが、どちらの業務にも「伝達」という言葉がキーになっています。広辞苑で見ると、「伝達」とは、命令・連絡事項を伝える事と定義されていますが、これは正解でもあり、不正解でもあるというのが私の持論です。この曖昧な部分をあえて残したまま、話を続けたいと思います。

私が通訳をする際に気を付けている点は二つ。
一つ目が伝え方です。まず、日本語とポルトガル語では文法で比較した際に語順が異なります。日本語がSOV(主語+目的語+動詞)に対してポルトガル語は、SVO(主語+動詞+目的語)の形を取ります。私は二言語間の相違は簡潔性の違いだと理解しています。そしてその延長線上で進んでいくと、プロセスよりも結果を求める人種だと考えます。日本人特有の行間を読む文化は、海外では適応されない事も多いため、簡潔明瞭に伝えてあげる事が大事です。しかし、聞かれた時に説明が出来るように「行間」の部分の答えを用意しておくと、日本文化の理解が深まると思います。

二つ目はタイミングです。誰しも怒っている時に嫌な事は聞きたくないですよね。つまり、然るべきタイミングで伝達する事も大事です。無論、聞き手にとって良い情報ばかりではないと思いますが、肝心な事は、「正しい情報を伝える」事なので、しっかりとタイミングを見極めながら簡潔に伝えてあげるように心掛けています。

自分の言葉が彼らのモチベーションに繋がる

選手の最終目標地点である「チームへの貢献」に到達させてあげる為には、彼らの気持ちを掻き立てる必要があります。これも通訳の大事な仕事の一つです。グラウンド内での監督・コーチもしくは選手間の温度を言葉に乗せる。言葉をただ訳せる人はたくさんいますが、プラスαで空気感を伝える事が出来ればより彼らの力になる事が出来るのです。プロスポーツの通訳は心を動かし成果を支える仕事なのかもしれません。

夢の舞台に立たせてもらったチームに貢献したい

今後の私の目標を宣言させてください。私の夢を叶えてくれたこのクラブに恩義を感じています。私が任されている役割を全うし、ブラジル人選手が本来の力を発揮出来るように全力でサポートしていきます。そしてそれがチームの掲げる目標である「タイトル奪取」に繋がると強く信じています。

2011年卒業
国際言語文化学科ポルトガル語専攻
勝田 道徳

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