異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

第68回
異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

《親密圏の異文化問題を考える》第5回
「留学生と一緒に本音で語ろう!
異文化体験とアイデンティティ」

学生
パネリスト
セロム(神田外語大学留学生別科学生・韓国出身)、
オフ(同・タイ出身)、
ヴィ(同・ベトナム出身)、
秋山未希(神田外語大学英米語学科学生)、
藤村千絵里(同・英米語学科学生)、
関口里穂(同・英米語学科学生)
司会
ギブソン松井佳子 (本学英米語学科教授・当研究所所長)
日時
2010年11月5日(金) 15:10~17:10 (開場:14:40~)
場所
神田外語大学(千葉・幕張)
5号館ミレニアムホール

留学生と本音で語るシリーズは、これまで国際友情、国際恋愛、国際結婚というテーマを取り上げてきましたが、今回は親密圏のなかでももっとも近くて遠い存在である「自分」を取り上げ、異文化体験が自己のアイデンティティにもたらす影響について、いろいろ語っていただこうと思います。留学生のみなさんは現在日本に住んで、日本語や文化を学びながらさまざまな異文化体験を通して、自分のアイデンティティ認識にどのような変化を感じているのでしょうか? また日本人学部1年生のみなさんは外国語や異文化学習を通して、これまで考えた事のなかったどんな問題に気づくようになっているのでしょうか? 等身大の本音トークを聴きながら、参加者のみなさんと活発に意見交換ができればと思います。多くのみなさんのご参加をお待ちしています!

パネリスト紹介
セロムさん(留学生別科・韓国・漢陽大学)
韓国の大学で日本語と日本文化を専攻している4年生です。今年は交換留学生として神田で大切な1年を過ごしています。日本語を勉強し始めてからもう5年も経ちますが、最近言語の学習には終わりがないということに気づき始めたところです。ここでは日本人はもちろん、いろいろな国から来た留学生とも「日本語で」コミュニケーションすることができて、とても楽しいです。私は言語を学ぶのが大好きで将来中国語、フランス語なども勉強してみたいと思っています。
ヴィ さん(留学生別科・ベトナム・ホーチミン市人文社会科学大学)
ベトナムのホーチミン市からきたヴィです。ホーチミン市で三年ぐらい日本語の勉強をしていましたので、せめて一度で良いので日本での生活を体験したいと思っていました。今、その夢が叶って神田外語大学に留学しています。こちらに来るまでは思ってもみないことでしたが、日本語や日本文化だけでなく、他のいろいろな文化や考え方についても学んでいます。「なるほど!」や「そうですか」という感じにあふれる生活を送っています。そして、だんだん文化の違うところに対しても同じところに対してもオープンな見方ができるようになりました。とても楽しいです!
オフ さん(留学生別科・タイ・ブラパー大学)
タイから来たオフと申します。本を読むこととゲームをすることが趣味です。子供の時日本のアニメやマンガが好きになり、日本語の勉強を始めました。それから日本語がだんだん好きになって、日本の文化や考え方にも興味を持つようになりました。今年1年間日本に留学できて、感激の極みです。留学中にいろいろな日本でしかできないことをしたいです。特に、日本の美しい自然と祭りが大好きなので、できれば、いろいろな自然が美しいところに旅行したいと思います。そして、「ど~ン」の音にこだわってかっこいい和太鼓も習いたいなあと思っています。最近の夢は日本で生活すること。だから、今はもう国に帰りたくない!!
秋山 未希 さん(英米語学科1年・東京都出身)
今まで私は海外旅行や留学など、日本を出たことはありません。けれど、KUISに入ってからは海外に行かなくとも、身近にいる外国人の先生や様々な国の留学生と交流でき、その中で異文化というものを体験しています。実際に海外に行く前にここで学べることは恵まれていると思っています。その交流の中で、コミュニケーションの媒体である言語以上に日本のことや世界のことなど学ぶ必要があると気付きました。たくさんの人との交流ができるように、たくさんのアンテナをはりめぐらして色々なことを学んでいきたいと思っています。
藤村 千絵里 さん(英米語学科1年・岩手県出身)
わたしは中学2年生のときにロサンゼルスへ、高校2年生のときにニュージーランドへそれぞれ2週間ホームスティをしました。短い期間でしたが異文化体験をしてとてもいい経験になりました。これをきっかけにますます異文化について興味をもつようになりました。異文化についてよく知るためには、国際交流が必要だと思っているので外国人との交流を大切に残りの大学生活を有意義に送っていきたいと思います。
関口 里穂 さん(英米語学科1年・埼玉県出身)
海外留学の経験はありませんが現在に至るまで留学生やネイティブの先生との交流の中で異文化に触れてきました。その中で私は異文化を理解し、尊重しつつ自分らしさ、日本人らしさも大切にするようになった気がします。異文化にふれることでみんなが何を感じ、それぞれの考えにどのような変化を与えているのかをこのディスカッションを通して知ることができたらと思っています。
講演会報告
(今千春、神田外語大学 非常勤講師)

「親密圏の異文化問題を考える」シリーズ第5回にあたる今回は、「異文化体験とアイデンティティ」というテーマで、韓国・タイ・ベトナムからの留学生3名と外国語や異文化学習を始めて間もない学部1年生3名をパネリストとして迎え、ギブソン松井佳子本研究所所長の司会進行により議論が行われた。

まず、留学生、日本人学生それぞれの立場から異文化に関して驚いたことを話し合ったところ、自己主張の仕方、および時間の捉え方の違いについての問題が浮かび上がった。日本人が自己主張をしないということは一般的によく言われる問題点であり、本シリーズにおいても同様に話題になった。中には、米国でも自己主張の少ないおとなしい人がいるという話もあったが、公的な場で必要とされる発言力についてはやはり日本人は弱いのではないかという指摘がなされた。時間については、パネリストの留学生全員が日本では時間に関して正確だと感じていた。いずれの留学生もこれを日本の良い文化であるとし、日本では自身も合わせて生活していると話していた。しかしこれは、時間を守る日本の文化を良い文化と普遍的に価値づけてしまうことへの危険もはらんでいる。果たして「良い文化」と「悪い文化」というものが存在するのか、この文化の価値づけは異文化の最終的な問題につながっていく。

また、異文化をいかに受け入れるかという点については、アイデンティティの問題が大きく関わってくることが指摘された。異文化体験には、頭で理解できるレベルから身体的に受け入れられないレベルまである。異文化環境でさまざまなレベルの体験をすることが個人のアイデンティティに影響を及ぼす、つまり、1つ1つの体験が自己をつくりあげていくのだという。今後は、異文化体験に対して自己を形成するプロセスとして捉える視点が必要であることが提示された。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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