異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

第32回
異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

「ゴビの馬頭琴弾き ネルグイ 日本ツアー 2003」

講師
ネルグイ(馬頭琴奏者)、
西村幹也(モンゴル研究者、モンゴル情報紙 「しゃがぁ」代表)、
嵯峨治彦(「のどうたの会」代表)、田中考子
司会
和田 純 (本学教授・異文化コミュニケーション研究所所長)
日時
2003年12月15日(月) 17:30~19:30 (開場17:00~)
場所
神田外語大学(千葉・幕張)
ミレニアムハウス
会場整理費
300円(当日払い)
講師からのメッセージ

ネルグイ氏は今もゴビの大草原で暮らす遊牧民です。その馬頭琴の調べは、舞台芸術化されたものとはちがう素朴さと力強さに満ちあふれ、繊細で躍動的な演奏は「ゴビの天才」と賞賛されてきました。西村幹也氏によるスライド&トークとともに、ネルグイ氏の馬頭琴の調べに酔いしれ、雄大なモンゴルの草原に旅をしてみませんか?

講師紹介
ネルグイ氏
5歳の時に、板きれと紐で馬頭琴を自作して演奏を始める。その後独学で奏法を極め、全モンゴル馬頭琴大会で金メダル4つ、銀メダル2つ、銅メダル3つを受賞。モンゴル国・第一文化功労者。北極星勲章(モンゴル文化省最高勲章)受賞。ゴビの天才と讃えられ、社会主義時代は劇場勤めの演奏家としても活動。旧東側諸国でも演奏。国立馬頭琴交響楽団の設立当時のメンバーでもある。モンゴルの民主化後は故郷のゴビに帰り、家族とともに遊牧生活を続け、呼ばれればその自慢の腕前を披露する生活を楽しんでいる。現在、52才。
西村 幹也氏
文化人類学を専攻。自らのフィールド経験をもとに情報紙やインターネットで モンゴルの情報を発信したり、自己所有の民具展示、写真展、講演会などを行っている。「アジア読本モンゴル」「ワールドカルチャーガイド モンゴル」など、多数の雑誌等に寄稿。現在、国立民族学博物館外来研究員・大阪学院大学非常勤講師(文化人類学)。
嵯峨 治彦氏
喉歌(ホーミー)とモリン・ホール(馬頭琴)の演奏家。アジア中央部の伝統音楽を演奏。また、日本伝来の新たな音楽として、独自の表現を追求。北海道を拠点に全国で演奏活動を展開。北海道大学理学部物理学科修士課程修了(宇宙物理学)。喉歌専門ラジオ番組「のどうたトライアングル」(札幌コミュニティFM)のDJ。FM北海道 番組審議委員(1998年4月~)。
講演会報告
(奥島美夏、異文化コミュニケーション研究所)

「ゴビの天才」と謳われた馬頭琴奏者ヨルドン・ネルグイ氏の日本ツアーが、モンゴル研究者の西村幹也氏、喉歌では日本の草分け奏者である嵯峨治彦氏や田中孝子氏の主催する「のどうたの会」などの尽力で、2003年11月から12月までの約1ヵ月半にわたっておこなわれた。そのツアーの終盤にあたる12月15日、当大学での実演奏をまじえたスライド・トークや馬頭琴伝説の語りなど、もりだくさんの公演がおこなわれ、大盛況を博した。/p>

内モンゴルの伝承「スーホの白い馬」で日本でもなじみの深い民族楽器の馬頭琴(モリンホール)は、モンゴルの近代化にしたがって半世紀ほど前から急速に舞台芸術化したといわれる。現在のプロ奏者の大半は専門機関でいわゆるクラシック音楽に基づく教育を受けており、海外で活躍したり、CDをリリースするなど、伝統芸能であったこのジャンルに新たな可能性をひらいてきた。

こうした動きの中で、ネルグイ氏は独学で奏法を極め、全モンゴル馬頭琴大会で金メダルを4つ、銀メダル2つ、銅メダル3つを受賞した数少ない芸術家である。氏は社会主義時代は劇場勤めの演奏家としても活躍していたが、モンゴルの民主化後は故郷のドンド・ゴビに戻った。北極星勲章(モンゴル文化省最高勲章)まで受章した氏は、いまやモンゴル国の第一文化功労者であるが、普段は家族とともに遊牧生活を送り、親族や友人に頼まれるたびに演奏を披露するという昔ながらの生活を続けている。

ツアー公演は、モンゴルの遊牧民の暮らしや自然観について、西村氏が自身の現地調査で撮影したスライドをもちいながら講演することで開幕した。ついで第2部では、まず嵯峨氏の演奏をバックに、外モンゴル版スーホの白い馬にあたる「馬頭琴伝説ジョノン・ハル」の語りが田中氏によって上演された。続いて、いよいよネルグイ氏の馬頭琴ソロが披露され、氏独特の奏法と醸し出される豊かな風情に会場は魅了された。さらに嵯峨氏とのデュエットも行われ、合間には、一つの喉から複数の音を出す喉歌(ホーミー)も披露された。

会場はダイナミックでおおらかな中にも哀調を帯びた繊細さのある馬頭琴の音にひととき酔い、ツアー公演は本年度の最後を飾るにふさわしい催しとなった。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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