異文化理解の先駆者たち

第9回 スターリング・M・プラタ『自立した学習者の育成が国の競争力を高める』

教育の中心は、「教えること」から
「学ぶこと」に変わるべきである

学生に自立して学ぶ力を身につけさせようというプラタの取り組みは、神田外語大学の教育と高い共通性がある。同大学では平成元(1989)年に英語の自立学習機関であるELI(English Language Institute)を設立した。所長を務めたのは外国語学部英米語学科教授のフランシス・ジョンソンだった。

オーストラリア出身のジョンソンは、パプアニューギニアや香港の大学で教えながら、外国語として英語を学ぶ人々向けのテキストを数多く執筆してきた。一方で、「自立学習者」という概念を研究し、その成果を神田外語大学のELIで実践した。

ELIには専任の教員が常駐した。教員は英語を母国語とし、第二言語としての英語教授法(TESL:Teaching English as a Second Language)の修士号を取得した20代の若者たちである。アメリカやイングランドだけでなく、オーストラリアやシンガポール、南アフリカ共和国、スコットランドからも教員を集めた。ELIを訪れる学生は、年齢の近い外国人教員たちとのコミュニケーションを通じて、世界の多種多様な英語に触れながら、英語を発話する力を養う機会を得たのだ。

当時、外国語大学では、外国語は教員が講義を通じて教えるものだという考えが一般的だった。一方のジョンソンは、学生が自分で学習計画を立案し、クラスメートと協力し合い、膨大な量のコミュニケーションを生み出しながら英語を学び、最終的には学生一人ひとりの習熟度合いに合ったカリキュラムを構築することが重要だと考えていた。まさに、自立学習者の育成である。

学生が受け身で学ぶ日本式の外国語教育。学生が自発的に外国語力を習得していく自立学習。両者は考え方が根本的に異なる。ELI設立当初、英米語学科の教員からの反発も多かったという。その逸話からもELIがいかに画期的なものだったかが理解できる。だが、ELIの取り組みはやがて評価されていく。

平成15(2003)年、神田外語大学ではELIでの研究を集約したSALC(Self-Access Learning Center)を開設した。学生はELIの英語教員と英語でコミュニケーションし、学習意欲を高める。施設には充実した教材や機材がそろい、学習アドバイザーが常駐する。現在、神田外語大学では大学間教育連携事業として、SALCのカリキュラムや教員を包括的なソリューションとして、他大学に提供している。ジョンソンは神田外語大学が進むべき教育の方向性についてこう語っている。

「私は、教育の中心が、『教えること』から『学ぶこと』に変わるべきだと考えています。教育の主役は教員ではなく、学ぶ者です。よい教え方とは、学生がどれだけ自分で学べるようになったかで計るべきです。教員が学びの主役が誰であるかをしっかりと考えられれば、私たちは大きな貢献ができるはずです」(3/4)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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