2008年英米語学科卒業の長岡です。 このような形で私の話を皆さんに伝えることになるとは夢にも思っていませんでしたが、いただいた機会に感謝しつつ、私のこれまでの経験に少しだけお付き合いください。
未知への挑戦。楽しさ転じて感じた英語学習の壁
神田外語大学へ進学したきっかけは、高校時代にホームステイのホストファミリーを経験したことです。その時に、語学力を伸ばすことで交流の幅が広がる楽しさに気づかせてくれました。
進学を考えた時、国内にいながら毎日国際交流ができるKUISを選択することに迷いはありませんでした。入学後の4年間は、高校時代の学び方とは異なり、視野や思考、行動範囲を広げる大きな転機となりました。
入学したての頃は、カリキュラムを組むのにも四苦八苦。高校までぬくぬくと田舎で育った私は、不安でどうにかなりそうなスタートでした。 フレマン*1が全て英語で行われることは分かっていましたが、スラスラと話すクラスメイトに引け目を感じてしまいました。
理解しているというリアクションもうまくとれず、「担任の先生を苛立たせているかもしれない…」と委縮してしまい、それまで楽しいと思っていた英語学習に壁を感じる時期でもありました。
*1 フレマン…フレッシュマンオリエンテーションキャンプ(Freshman Orientation Camp) 新入生を対象とした1泊2日の研修プログラム。2026年度開催の様子(大学公式HPより)
https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/news/468623/
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「幕チャリ」初代メンバー。そして学外、世界へと歩き出す
しかし、大学で出会った友達・先輩・先生など皆さんから沢山の刺激をもらい、マイナス思考になりがちな私を、時には友達が叱ってくれることもありました。
2年生になる頃には2つの運動系サークルに所属し、3・4年次には幕張周辺にお住まいの方々や企業からご寄付いただいた商品を販売して募金する「幕張チャリティフリマ(幕チャリ)」の初代メンバーや二代目代表を務めるなど、授業以外のフィールドでもいろいろな体験や学びを得ることができました。
また、幕チャリの活動で企業へ協賛のお願いに伺ううちに、大学外へと交流の場が広がり、途上国へのスタディツアーを行う学生団体の運営者と出会いました。
3年次にはツアー参加者として、4年次には学生団体に加入してツアー企画・運営側に回り、海外のNPO・NGOや日本語学校、孤児院のスタッフと交渉する経験もしました。
この4年間で得た経験や友達・仲間は私にとって貴重であり、今の(比較的?)ポジティブな私になるきっかけになったと思います。

キャリアの迷路で見つけた「伝える」。言葉や文字だけが情報ではない
卒業後は、新卒で外資系ホテルに就職し、客室部や宿泊部に勤務しました。サービス業や接客業に就きたいと思っていたので、就職当時はやる気に満ち溢れていたと思います。
しかし、客室のコントロールやフロント業務などの日常業務を続ける中で、漠然と抱いていた「サービス業・接客業」への思いに迷いが生じました。
うまく表現できませんが、自分が本当にやりたい事は何かを考え直した結果、「伝える」ことに興味があるのではないかと思い至り、ホテルに勤めながら翻訳字幕の学校に通い始めました。
その後、字幕制作に役立つかもしれないとホテルを退職してテレビ局のADとなり、現場で「伝える」ことを実際に経験しました。
ある時、字幕学校から聴覚障害者用の字幕作成の仕事をしないかとお話をいただき、ADを辞めてフリーランスの字幕ライターになりました。そこでは翻訳字幕とは異なる世界に出会い、言葉以外の音を文字で表現するなど、「伝える」ことの難しさと奥深さを学びました。
テレビなどを観ていると、何気なく聴き逃している虫の鳴き声や物音がストーリー転換のポイントになっていることがあり、そこを文字に起こして表現することもあるのです。聞こえる・読める「言葉や文字」だけが情報ではないことに気づかせてもらえる仕事でした。

子育てを経て何度も再考。「自分がやりたい事」って?
その後、結婚や出産を経て長らく外での仕事から離れていましたが、もともと活動的な性格だったためか、乳酸菌飲料の販売の仕事を始めました。そして、子どもたちが小学生に上がるタイミングで、改めて「自分がやりたい事は何か」を考えるようになりました。
「子どもがいるからやりたい仕事を諦める?いや、それは違うな」「子育てに理解のある職場環境とは、本来どのようなものだろう」「世の中の親御さんや子どもたちの生活に、ちょっとした喜びを提供できる仕事がしたい」「子どもと一緒に考えられる事ってなんだろう」……そんなことを考えていたときに出会ったのが、フェアトレードのチョコレートやコーヒーでした。
フェアトレードとの衝撃的な出会い。商品の背景を知る楽しさ
ある街の小さな八百屋さんに並んでいた商品が、海外事情や環境への取り組みについて考えるきっかけを与えてくれました。子育てのことで頭がいっぱいだった私には、とても衝撃的でした。
なんだかワクワクして、奇しくも私がハタチ前後の大学生時代に経験した感覚と似ており、再び「外の世界」を見るきっかけとなる出会いでした。
それまでは家族や自分の健康を考えて買い物をしていましたが、その商品が消費者にとって良いもので美味しいだけでなく、生産者の生活向上や健康、環境保全にも繋がっていることに気づいたのです。
そう考えると、私の中で何気ない買い物の価値が爆上がりし、商品の背景にあるストーリーを知る楽しさに目覚めました。
例えば有機野菜は、農薬や化学肥料を使っていないから食べた時に害がない、というだけではありません。生産時に農薬による生産者への健康被害を防いだり、土の中の微生物への被害を抑えたりすることにも繋がっているのです。それまでは恥ずかしながら気づいていないことでした。
学生時代からボランティアや社会貢献に関心はありましたが、それらは日々の生活に「プラスα」で行うものだと思っていました。
しかし、最近よく耳にするSDGsのように、私たちの生活の中(=買い物)でできることこそが、持続可能な生産や生産者の生活、そして地球環境を守ることに直結するのだと気づいたのです。
日常から未来を守り知ってもらう。誰かのきっかけとなるために
そして今、私は世界中のフェアトレードやオーガニックなど、エシカルなこだわり商品を取り扱う会社で営業として働いています。
営業という仕事を通して、お客様に喜んでもらえる商品と、その商品が持つストーリーや価値を多くの方に伝えたいと思っています。
振り返ってみると、大学生活と今の仕事に共通しているのは「きっかけ」を伝えることだと思います。チャリティフリマで学生や地域の方々に社会貢献に参加してもらうこと、スタディツアーで現地を訪問して実際に体験・感じ取ってもらうこと、商品の見た目や味の向こう側にある背景を知ってもらうこと……。
おこがましいかもしれませんが、私が伝えたいのは「答え」ではありません。人生に正解は一つではありませんし、たとえ私が正しいと思って伝えても、それは私の思い込みに過ぎないかもしれないからです。
そうではなく、一人ひとりが何かに気づき、考え、行動する「きっかけ」を届けたいというのが、私の根底にある思いのようです。

2008年
英米語学科卒
長岡 良枝


