第22回 “What a huge amount of accounts receivable !”  ~なんでこんなに売掛金が滞留しているんだ!~

 イタリア会社では、毎月マネージャーミーティングを実施し、業績のレビューと今後の見通しを踏まえ、必要なアクション、施策を議論していました。

 9月の会議でのことです。会議はいつもどおり、朝一番に始まりました。夏休み明けとあって、みんなまだ夏休みモードがぬぐい切れない感がありました。

 経理から業績の報告があったときのことです。バランスシートを見た瞬間、「売掛金がなんでこんなに滞留しているんだ!すぐに回収しないとえらいことになる!」と社長が叫びました。第18回で書きましたように、イタリアでは8月はほぼ一か月間は夏休みとなり、ビジネスが眠ってしまいます。そこで一気に売掛金が滞留してしまったのです。とはいえ、既に9月も10日を過ぎていましたので、未だに回収されていないのは確かにまずい状況でした。Due date(支払日)は月末締めでしたから、明らかにOverdue(延滞)です。

 社長の第一声を聞くや、会議はすぐに打ち切りとなりました。お客様はフィレンツェなので、ミラノから車を飛ばすと3時間かかりますが、10時過ぎでしたので、今から行けば、午後一番には到着することができます。経理マネージャーの動きは速やく、営業マネージャーとコーポレートプラニングマネージャーの私も彼の車にすぐに飛び乗り、フィレンツェへ向かいました。このときばかりはイタリア会社のパワーを感じました。社長が血相を変えて声を発したからではありますが、社長の真剣さをみながすぐに感じ取り、行動に移した素早さに私はイタリア人もやるときはやるんだなと妙に感心してしまいました。

 観光でしか行ったことのないフィレンツェの街は、この日ばかりはなんだか重たい感じがしました。お客様には事前に行くことは連絡してあったので、我々は到着するやすぐに売掛金をいつ払うのかと迫りました。ところが、お客様は「何を慌てているんだ、ここはイタリアだぞ。8月は商売がないことくらいわかっているだろう。9月中には払うから心配するな」と言って、平然としています。しかし、経理マネージャーは、「それでは遅すぎる。そもそも8月末に支払う約束なんだから、すぐに支払え」と押し返し、一週間以内に支払うことをコミットさせました。

 支払うまでは安心できませんが、一応書いたもので約束させたので、ひと息つこうということで、フィレンツェの街が一望できるミケランジェロの丘に行きました。そのときのフィレンツェの街は夕日に染まり、とても美しかったのを今でも覚えています。着いたときの重たい気分はなくなり、フィレンツェの夕暮れを堪能する余裕が生まれていました。それにしても社長の真剣さとそれにすぐに反応し、行動に移したイタリア人のマネージャーたち。私は社長のイニシァティブとイタリア会社の結束のよさを強く感じました。

 電話で社長に交渉結果を報告すると社長も少し安心されました。翌日、社長から「あそこでゆるく対応していたら、お客様に舐められるだけでなく、社内のタガも緩む。それを一番恐れた」と言われたときには、社長という立場はやはり違うんだと思いました。私などそこまで考えが及んでいなかったし、8月だから売掛金が滞留するのは仕方がないくらいに思っていたのです。この迅速なリアクションはお客様に対しても社内的にも効果覿面でした。社長の姿勢がいかに大事かを痛感した出来事でした。

 間髪入れず判断し、行動する大切さ、それはトップのリーダーシップと社員のフォロワーシップが共鳴してできることだと思います。あの日のフィレンツェの夕暮れは今も目に焼き付いています。

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