第10回「グローバルの窓」 “Prost !”~乾杯!~

ディスクドライブビジネスは大手パソコンメーカーが主要顧客でしたので、プロモーションは自ずとプリンターとは違う施策となりました。

ターゲット顧客は特定少数ですので、広告宣伝はほとんど必要なく、施策は特定の顧客めがけて打つかたちとなりました。

NECが当時スポンサーとして開催していた「デビスカップ(テニス)」や「サイト―キネンコンサート(小澤征爾指揮)」、「ミュンヘンフィルハーモニー」の演奏会には、ディスクドライブビジネスの大手顧客を招待し、親睦を深めました。それ以外にもシーメンス社などの重要顧客には、年に2回、「フレンドシップアクティビティ」と称してイベントを実施しました。

夏はミュンヘンの「イザール川下り」、冬は「欧州アルプスでのスキーツアー」を実施したのです。ミュンヘンの地の利を最大限活かしたイベントは、地元のシーメンス社のみなさんには大いに受けました。特に「イザール川下り」は30人の筏を貸し切り、楽団を雇って、筏の上でビールを飲んで、バイエルン地方の唄を歌うのです。”Prost!(プロ―スト)”とみなで声を上げてビールで乾杯!そのうち興が乗ってくると筏の上で踊り出す人も出てきます。バイエルンはドイツの中でも最も陽気な土地柄なんですね、

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なんでも統計によると、バイエルン地方は北のハンブルク地方よりも太陽が年に30日も多いようです。たしかにブラームス(ハンブルク出身)とモーツァルト(ザルツブルグ出身)の音楽を聴いてもその違いがわかります。ザルツブルグはオーストリアですが、バイエルン州に隣接している街です。軽快なモーツァルトの音楽はバイエルンの晴れた日、重厚なブラームスの音楽は北ドイツの曇り空の多い日に通じるところがあります。

この「イザール川下り」の企画は大いに当たり、参加人数が30人では収まらず、2度に分けて実施しました。日本から事業部のみなさんも出張で参加してもらいました。

社内営業の面からも大いに当たり、ディスクドライブ事業部との関係も非常に良好なものとなりました。プロモーション施策は、顧客向けのみならず、ときに事業部からの協力、支援の取り付け、あるいは従業員のモチベーションといった社内の効果にもつながることがあります。

ドイツ会社を「NECライフ」という社内定期マガジンに紹介してほしいと本社から依頼があったとき、事業部のみなさんが参加したときの「イザール川下り」の写真を掲載したのですが、そのときは事業部の方からクレームがきました。写真をみて、周りの人は、出張で遊んでいると言ったそうなのです。実際は技術問題や価格対応のため厳しい交渉に来ていただき、そのあとでこのイベントに参加いただいたのですが、ビールジョッキを掲げ、顔を赤くして、筏の上で乾杯している写真を見ると仕方ないかなと思いました。事業部のみなさんも乾杯のときは、シーメンスの人と肩を組で、”Prost!(プロ―スト)”と元気にドイツ語を連発していました。

実はミュンヘンにはもう一つ”プロ―スト”を連発するイベントがあります。あの有名なオクトーバーフェストです。テレ―ジエン緑地に遊園地とビアホールを10以上も臨時で設営し、二週間ほどビールの収穫を祝うのです、このイベントの始まりは1810年で、今日では毎年600万人以上の人が集う世界最大級のビール祭りとなっています。当然、我々もテーブルを連日予約し、お客様を招待して飲めや歌えの大騒ぎです。バイエルンの人たちにとってオクトーバーフェストは一番待ち遠しい行事ですが、昨年はコロナ禍で中止、今年も既に中止が発表されたようで残念です。

”プロ―スト!” なんと元気の出ることばでしょう。価格問題や技術問題もこの一言で何とかなりました。お客様との一体感が生まれたのです。