仲代表の「グローバルの窓」

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第7回 ”The tree is growing up together with the sun” ~やるしかない!~

2021.08.09

第3回に書いたハーターのディスクドライブビジネスは、一年越しの営業努力の結果、芽が出始めました。私がまだ日本で勤務していたときのことですが、ドイツのお客様とイタリアのお客様がまったく同じ日の同じ時間に我々を訪問したいと言ってきたのです。さすがに同時に二つのお客様を受け入れることはできないと思い、時間をずらしてもらうようお願いしましたが、両社とも来日スケジュールがびっしり詰まっていて、変更できないというのです。困った私は、上司の課長に相談しました。

 課長はしばらく考えたあと、私にこう言いました。「よし、わかった。お客様は両方とも大事だがら、二手に分けて対応しよう。イタリアは俺がやるからドイツは仲君がやってくれ」

また、ディスクドライブ事業部も誰々はドイツ、誰々はイタリアと二つに分けて対応グループを決めました。それぞれのグループをリードするのは、課長と私です。入社4年目の私が一方のグループの部長さんや課長さんたちをリードしないといけないのです。不安はありましたが、最後は事業部と信頼関係ができていたので、何とかなるだろうと腹をくくりました。

 実は事業部のみなさんとは、一か月ほど前に居酒屋で決起集会を開き(単なる飲み会ですが)、100億円をめざすぞ!とみなで息巻いていたのです。のちに販促部長が「あのときは勢いでああ言ったけど、まさかほんとに実現するとは思わなかった」とコメントされました。我々営業と事業部とはそれまでも信頼関係ができつつありましたが、あの決起集会で一つにまとまったような気がします。そのときは誰も目標が達成できるとは思っていませんでしたが、目標を共有できたことは大きかったと思います。誰一人そんなの無理に決まってる、といったネガティブなコメントはしなかったし、とにかくやってみようという思いになっていました。雪のアルプス越えを経て、シーメンス社の信頼を勝ち得てからビジネスの引き合いが増え出していました。シーメンス社というリファレンスモデルをつくれたのが大きかったのです。

 あの日、どちらかのお客様を断っていれば、その勢いは弱まったでしょう。流れを変えず、二手に分かれて対応し、ショールームを見せたり、商品計画を議論したりして、両方のお客様の満足を得ることができました。それにしても忙しい一日でした。ビジネスには正念場があると思いますが、ディスクドライブのビジネスにおいては、あのときが一つの正念場だったのだと思います。みな一丸となって何でもトライしてみようという気持があったことが正念場を乗り越えられた最大の要因でした。それはハーターのモットーである”Never give up”にも通じる精神で、関係者全員とこの精神を共有できていたことが最大の成功要因だったと今あらためて思います。

 課長のおもいきった決断は鮮やかでした。雪のアルプス越えから流れが変わり、その勢いを止めずに邁進することができました。課長がプレゼンテーションの最後にいつも示した「NEC Tree」の絵を思い出します。太陽はお客様、木がNECです。木は太陽の光を浴びて育つのです。

 ”The tree is growing up together with  the sun.”と言って、私はプレゼンテーションを締めくくりました。きっと課長もイタリアのお客様に同じ言葉で締めくくったにちがいありません。


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