国内外で、果汁などをゼラチンで固めたお菓子「グミ」の市場が拡大中です。グミの人気状況とその背景、日本のグミの歴史、アメリカでのグミ人気の動向などをまとめてみました。
「グミ」は高校生が「これから流行しそうだ」と思うスイーツ第1位
2024年4月22日、LINEリサーチ(LINEヤフー株式会社)が全国の高校生を対象に実施した「今後流行りそうなスイーツ、飲み物、食べ物に関する調査」(2024年3月)の結果を発表しました。
高校生がこれから流行しそうだと思う「スイーツ」の全体の1位は「グミ」(回答の2割超)。昨年(2023年の調査)でも男女ともに1位で、特に高1女子で3割弱の高い割合となっていました。
「グミ」に続くのが、どちらも1割台後半の僅差で「生ドーナツ」「チュロス」(スペイン発祥の揚げ菓子)。「生ドーナツ」は女子高校生で2位、男子高校生で3位にランクイン。また、昨年はランキング外だった「チュロス」ですが、女子高校生では4位、男子高校生では2位と大きく順位を上げています。
「食感がクセになる」「SNSでよく見かける」
(全体で第1位になった)「グミ」を選んだ理由には次のようなものが含まれています。
-食感がクセになる(高1女子)
-グミの種類が色々出てきているから(高1女子)
-グミは一口サイズですぐ食べられるから(高2女子)
-グミは、形や味など色々な工夫により、流行るものが出てくる可能性がある(高2男子)
-グミはTikTokやTwitterなどのSNSでよく見かける(高3女子)
マーケティング調査会社「インテージ」(東京都千代田区神田練塀町)によると、2023年、日本国内の「グミの市場規模」は販売金額ベースで前年比24%増の972億円に到達。一方、2021年にガムとグミの市場規模が逆転し、市場の縮小化が続く「ガム市場」との差は400億円近くに拡大。そうした趨勢(すうせい)により、コンビニのガム売り場は、グミの店内ディスプレイスペースに比べ、どんどん小さくなっているようです。
ドイツ発祥の「グミ」の語源は「噛む」!
「グミ」とは、ゼラチンなどを原材料とし、果汁などの味をつけ、ゴムのように弾力のある形に固めたお菓子です。その「グミ」の歴史をCBCテレビ(中部日本放送)特別解説委員・北辻利寿氏がわかりやすく解説しています(CBC論説THEコラム『東西南北論説風』[2023年7月4日])。その解説記事などをもとグミの歴史に確認しておきましょう。
「グミ」は、1922年(大正11年)に、ドイツのお菓子メーカーである「ハリボー」(HARIBO)社が発売。「グミ」は、ドイツ語で「噛む」(gummi)の意味。英語は「Gummy」([gʌ́mi])で発音は「ガミィ」に近い感じです。ちなみに社名の由来は創業者名(ハンス・リーゲル氏)と創業地名(ボン)の「Hans Riegel, Bonn」の頭文字の合成語。
ドイツの「グミ」は子供の噛む力を鍛えるお菓子だった!
当時のドイツで、歯の病気にかかる子どもが多いことが、社会問題化。そこで「子どもたちの噛む力を強くしよう」と考え出されたのが「グミ」だったのです。ゼラチンに甘味を加えて作り、子どもたちに愛されるように「形」は可愛らしい熊の姿。ハリボー社の「グミ」は、発売後100年以上経った今でも、日本の店頭に並んでいます。
その「グミ」に注目したのが日本の菓子メーカー「明治製菓」(現・株式会社 明治)。新商品の開発のために、1979年(昭和54年)、開発担当者がヨーロッパを視察。そこで出合ったのが「グミ」。「これを日本で『新しいお菓子』として開発したら、きっと楽しい商品になる」。そこから明治製菓の「グミ」開発がスタート。
明治製菓が、日本人向けに柔らかさや食感などで「グミ」を改良
もともと、キャンディーとゼリーの中間のような「グミ」は、豊富な可能性を持っていました。いろいろな形にできるし、いろいろな味もつけられる。
ドイツの「グミ」は、噛む力を向上する目的のため、とにかく硬くできていました。そこで、日本人の口に合う「柔らかさ」「弾力性」「食感」「歯切れの良さ」、さらに、美味しいと思う「味」が研究されました。1980年(昭和55年)、明治製菓によって初の国産グミが誕生。商品名は「コーラアップ」で、親しみやすいコーラ味で発売直後から人気を集めました。
この人気を背景に、明治製菓は、さらなる味を追求。その結果、子どもから大人まで、多くの人に食べてもらえるフルーツ味の「グミ」が誕生。1988年に、明治製菓が発売した「果汁グミ」が若年層を中心にヒットし、国内のグミ市場が大きく拡大したのです。
「地球グミ」「むけるグミ」「グミッツェル」
(時が経過し)2021年から22年にかけて、「地球グミ」(トローリ プラネットグミ)と呼ばれる4個入り500円の輸入グミが若者の間で大ヒット。1948年設立のドイツのメダラー(MEDERER)社が製造するグミです。ショート動画投稿アプリ「TikTok」で「口で地球グミを割る」動画がバズりました。
2023年4月には、伝統ある旅行ガイドブックとコラボした「地球の歩き方グミ インド編」が、「ファミリーマート」で登場し、大きな話題になりました。
さらに翌24年4月には、100円均一の「ダイソー」(DAISO)からでフルーツ味の「むけるグミ」が発売され注目が集まりました。実際の果物のように皮をむいて食べる「むけるグミ」。マンゴー、バナナ、ピーチ、オレンジ、グレープのフレーバーがあります。
2023年12月には、UHA味覚糖から「忍者めし 鉄の鎧 グレープ味」が発売されました。「ザクッと超弾力!」というハードな食感を売りにしているグミですが、発売当時、1週間程度で売り切れ、コンビニの棚から姿を消し、24年4月の再販時も同じく1週間程度で品薄状態を引き起こすほどの人気です。ちなみにUHAは「ユーハ」と読み「ユニーク・ヒューマン・アドベンチャー」の頭文字をとったものです。
くわえて、2024年4月に東急プラザ原宿「ハラカド」1階にオープンした食品メーカー/カンロ直営店の「ヒトツブカンロ」。現在、若い女性層を中心に大盛況ですが、人気No.1商品が売り切れ続出の「グミッツェル」。外側はパリッと、中はしっとりの焼き菓子のプレッツェル型をイメージした「次世代食感グミ」です。
以上のように、もともと歯を鍛えるためにドイツで生まれたグミは、日本のアイデアと開発技術によって、現在も大きく進化し続け人気商品となっているのです。
スティーブ・ジョブズ氏も認める「日本の再発明力」の好例の一つが「グミ」!
日本における「グミ」の歴史と進化を知ったとき、Apple社共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏の次の名言を思い出しました。
“Japan’s very interesting. Some people think it copies things. I don’t think that anymore. I think what they do is reinvent things. They will get something that’s already been invented and study it until they thoroughly understand it. In some cases, they understand it better than the original inventor.” Steve Jobs
(日本語)
「日本はとても面白い。日本は物事をコピーしていると考える人もいる。私はもう、そうは思わない。彼らがやっているのは物事の再発明だと思う。すでに発明されたものを手に入れ、それを徹底的に理解するまで研究する。場合によっては、元の発明者よりもよく理解していることもある。」 スティーブ・ジョブズ
「海外(例えば米国)発祥のアイデア/商品を、日本が再発明」。その意味での身近な例としては、コンビニや温水洗浄便座(TOTOのウォシュレット)があります。実はゲーム機も1972年にアメリカで誕生し(マグナボックス社「オデッセイ」)、その後、日本の「ニンテンドー」(任天堂)や「ソニー」が発展させたという歴史があります。
日本で進化しているドイツ発祥の「グミ」も、スティーブ・ジョブズ氏も認める「日本の再発明力」の好例の一つといっていいでしょう。
グミ好きの人気女優・吉岡里帆さんは「日本グミ協会」の名誉会員!
日本には「グミ」を応援する団体があります。それが「日本グミ協会」(https://93gummy.jp)です。同協会は、コンビニで売っている100円グミのボトムアップを目的に、2013年に同人活動としてソーシャルメディア上で活動を開始。
同協会(現)名誉会長・武者慶佑(むしゃ けいすけ)氏が2016年(4月12日)に情報番組『マツコの知らない世界』(TBS)に出演し大きな注目が集まり、それをキッカケにして国内メーカーと一緒に「9月3日」の「グミの日」を盛り上げるべく団体「GUMMIT」(グミット)を結成。2017年から「グミの日」を盛り上げるべく、メーカーの垣根を超えた共同キャンペーンや共同イベントを実施。
ドラマ『あさが来た』 『カルテット』 『ごめん、愛してる』でブレイクした人気女優の「吉岡里帆」(よしおか りほ)さんも「日本グミ協会」の名誉会員だそうです。吉岡さんがFMラジオ局J-WAVEのトーク番組内で「おすすめ」のグミを紹介しています(番組『VOICE OF FOOD ~AJI NA FUKUONSEI~』[2023年7月27日])。
人気が高いのは「果汁グミ(明治)」や「ピュレグミ(カンロ)」
(前述の)「LINEリサーチ」の調査結果(2023年11月)によると、人気が高い「グミ」として、1位は「果汁グミ(明治)」(42.5%)となり、「ピュレグミ(カンロ)」(23.4%)、「ポイフル(明治)」(19.2%)が続きました。
年代別では、「全く食べない人」が「最も少なかった」のは10代。「週に1日以上」が35.0%で、3人に1人が頻繁にグミを食べているようです。全く食べない人の割合は、年代が上がるにつれて高くなる傾向がみられました。
日本でのグミ人気の背景は?
前述の日本グミ協会の現会長「あいうえお」氏によると、グミ人気には次のような理由があるそうです。
第1が、SNS映えする要素があること。新しいカラフルなグミを見つけると、購入者は画像などを即座にSNSで発信するそうです。
第2が、新型コロナ禍の巣ごもり生活で、口臭エチケットへの気配りレベルが低下し(他人と対面する機会の減少)、ガムよりグミの人気が増えたこと。第3が、ガムとは異なり「ごみ」が出ないこと。
さらに、市場アナリストの木地利光((きじ としみつ)氏によると、グミの購入者層は中高年層など幅広く、「そしゃくすることで眠気覚ましにも期待ができる」という理由があるそうです(情報サイト「Sittake」(しったけ!:知る+きっかけ))。
「長時間同じ味」の飴(ハードキャンディー)を「若者世代」が敬遠?
くわえて、(前述の)木地氏は次のような興味深い分析を語っています。従来の飴(あめ)、つまりハードキャンディーは消費するのに時間がかかる。タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する若者(たとえば「Z世代」)は、長時間かけて何かを楽しむより、その瞬間、瞬間で物事を楽しむ嗜好(しこう)があり、飴は敬遠されている。その飴に代わって伸びているのが食感も楽しめ、短時間で食べ終わるグミ。
ちなにみ、本年(2024年)製造中止になり大きな話題となった明治「チェルシー」などの飴市場は縮小傾向にあります。(前述の)調査会社インテージによると、飴の中でも「のど飴」は堅調だが、それ以外の2020年の国内販売額は357億円(推計)。約20年で4割減少しているとのこと(東京新聞記事[2024年3月9日])。
アメリカにおけるグミ人気
さて、海外に目を向けると、たとえば米国のグミ市場規模は2023年に31.2億ドル(約4,700億円)と推定されています。日本の市場規模の約4.7倍です。米国グミ市場は2024年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)11.6%で拡大すると予想されています(米国リサーチ会社「Grand View Research」)。
新型コロナ禍で免疫力への意識が高まるなか、アメリカではグミ状の大人用ビタミンサプリのブームが発生しているようです。フルーツなどの様々な味(フレーバー)がついていて、噛みやすく従来の錠剤と比べて負担が少なく、抵抗感なく日常の生活に取り入れやすいのがその理由です。
ある調査では、4割ぐらいのアメリカ人が錠剤を飲み込むことに抵抗を感じていると答えています。錠剤が苦手、あるいは飲み込むのが難しい大人にとって、グミは「楽しくて便利な形状」であり、繰り返し飲むことに抵抗を感じない点で優れているそうです。
グミのプラス効果と可能性
さて、大手食品会社「明治」が、グミの「かみごたえ」と摂取後に想起される心理状態(感性)の関係を確認。「かみごたえ」が弱いグミは「リラックス」。「かみごたえ」が中程度のグミは「やる気が出る」、そして「かみごたえ」が中程度~強いグミは「覚醒感」を想起しやすいそうです(「DIAMOND online記事」[2023年7月4日])。
同じく大手菓子メーカー「ブルボン」は、武蔵丘短期大学(埼玉県)との共同研究で、運動時にグミを摂取すると疲労軽減などに効果がある可能性を確認。ゴルフのプレー中にグミを継続的に摂取すると、プレー後半の疲労軽減や集中力維持につながることが判明(2023年8月21日「ブルボン社記者発表資料」)。
これまでお菓子として注目が集まり現在も進化しているグミですが、ビタミンサプリメントや心理的効果など、その可能性はまだまだ大きいといえます。