GCIについて

関係者インタビュー

河越 真帆

グローバル・コミュニケーション研究所長(2023年4月~2024年3月)
グローバル・リベラルアーツ学部グローバル・リベラルアーツ学科准教授

近年、新型コロナウィルスの蔓延やロシアによるウクライナ侵攻、気候変動による災害被害等さまざまな出来事が世界で起きており、社会の分断や人々の間の対立に繋がっています。この状況下では、世界を一つにするグローバル化は停滞していると言えるかもしれません。しかし、この混迷の時代であるからこそ、グローバル化の位相を解明しつつ、異なる文化や価値観を持つ他者とのコミュニケーションを研究し、その成果を教育と社会に還元する意義は大いにあるのではないでしょうか。

グローバル・コミュニケーション研究所(Global Communication Institute: 以下GCI)は、異文化コミュニケーション研究所と国際問題研究所が統合されて創設されました。この設立の経緯からもわかるように、GCIは「グローバル化」と「コミュニケーション」をキーワードとした学際的な研究を奨励します。
GCIは、研究と教育支援および社会貢献に邁進いたします。

髙杉忠明

グローバル・コミュニケーション研究所長(2018年4月~2023年3月)
神田外語大学名誉教授

地域・国際研究の重要性

2交通・輸送・コミュニケーション手段の飛躍的発展と市場経済の世界的拡大によって、現在の国際社会では、ヒト・モノ・カネ・情報が未曾有のスピードで国境を越えて行き交い、グローバル化が進んでいます。一方、こうした流れに対抗し、自らの生活や伝統・文化、民族的アイデンティティを守ろうとする動きが、世界各地(ローカルなレベル)から発せられています。グローバル化は世界を一つにまとめ、人間の生活に大きなメリットをもたらすものの、国内外で貧富の差を生み出し、ナショナルなレベルやローカルなレベルから様々な反発や抵抗を生み出しています。こうしたグローバル化とローカル化が併存した状況を「グローカル化」と呼ぶことができます。本研究所は、この「グローカル化」した状況にある国際社会を対象に様々な角度から研究を進めて参ります。

コミュニケーション研究の重要性

グローバル化の進展は、人々に様々な情報を与え、多様な価値観や生活様式を世界各地に拡散させ、多様なアクターを登場させました。伝統的な国家に加えて、NGO(非国家アクター)等の小集団や個人さえもが自らの価値観や信念に従って、主体的かつ積極的に、しかも国境横断的な活動を展開しています。多様なアクターの登場は、しばしば誤解や偏見、対立を生み出します。自分とは異なる考えを持つ他者の存在を受容し、相互にコミュニケーションを深め、違いを乗り越えて共存していくにはどうしたらよいのか。本研究所はこうした他者との共存を確保するための諸条件を、言語研究やコミュニケーション研究、そして異文化接触の視点から追究していきます。

グローバル人材の育成

さらに、未来を担う学生のために本研究所の研究成果を社会に還元していきたいと考えています。異文化を理解・尊重し、異なった考えを持つ人々とコミュニケーションを深め、自国の文化や価値観を的確に伝える能力を備えた人材を育成していくこと、すなわち高い語学運用能力と深い国際的教養を身につけ、グローバル社会をたくましく生き抜く人材を輩出していくことも研究所の活動の目標と捉え、真摯に取り組んでまいります。

サウクエン・ファン

グローバル・コミュニケーション研究所長(2014年4月~2018年3月)
国際コミュニケーション学科教授、社会言語学

20世紀の後半から特に顕著になった国際情勢の変化、インターネットの普及、交通手段の発達によって、ヒト、モノ、カネ、情報が未曾有のペースで国境を越えて往来しています。

日本においても、多国籍企業、外国人住民の増加をはじめ、生活の多様化・情報化が目立つようになりました。「グローバリゼーション」、「多文化社会」、「多文化共生」と言った用語が飛び交うなか、言葉の中身を深く考えずにそのまま受け入れる若者も少なくないようです。

日本人は「客にはもてなすが、隣人にはなれない」との指摘があります。

日本社会のグローバル化が進めば進むほど、外国人・外国文化は常に「ソト」に位置づけられるものではなくなり、「客をもてなす」以上の努力が求められます。「ソト」と「ウチ」を区別せずに、相手との共有空間を創造し、ともに普遍的な価値を追求していくことが何よりも重要です。社会グローバル化によって、外国語学習は単に舶来文化を摂取したり、付加価値の象徴ではなくなり、実用的であるとともに交流のきっかけと道具としての意義がより強くなっていきます。

外国語大学の社会における位置づけも見直す時期が到来したと言えます。

本研究所は、様々な活動を通して、グローバリゼーションの課題に真摯に取り組み、21世紀の外国語大学の姿を作り上げる一助となることを目指します。

酒井邦弥

グローバル・コミュニケーション研究所長(2012年4月~2014年3月)
神田外語大学特別顧問

グローバル化時代の現在、世界はお互いを必要とする新しいステージへと向かっています。世界の国々とのつながりはますます強化され、グローバル社会で生きるために真に必要な能力――すなわち、異文化を理解し、コミュニケーションができるとともに、自国の価値観や自分の意思を的確に伝える能力――を備えた人材を育成することが重要となっています。

こうした流れのなか、2012年4月、グローバル人材の育成の強化を図るため異文化コミュニケーション研究所と国際問題研究所を統合し、グローバル・コミュニケーション研究所として新たに発足しました。

和田純

異文化コミュニケーション研究所所長(2001年4月~2009年3月)
国際コミュニケーション学科教授

1984年に異文化コミュニケーション研究所を創設された古田暁所長が1999年に退任され、ともに尽力されてきた久米昭元副所長も2000年に退任されたのを機に、私は同研究所の所長として着任しました。それまで私は、国際的な文化交流や知的交流、さらには政策協議や国際共同作業に長年携わってきていましたので、異文化コミュニケーションの課題は実感して余りあるものがありました。しかし同時に、これからはむしろ、多様性の中での共存をめざしていかに「共有価値shared value」を創出し、「協働collaboration」を深化させるのかに、より重点が置かれるべきとも強く感じていました。

つまり、急速に世界がグローバル化する中で、21世紀には地球全体を「グローバル・コミュニティ」と認識して共存を実現することがいよいよ不可避になったと考えていたのです。「共存のための協働」こそが未来への鍵だと考えていたと言い換えてもよいかもしれません。ちょうど研究所においても、異文化interculturalという概念だけでなく、多文化 multiculturalやグローカルglocal = global + localといった概念により大きな関心が向けられるようになった時期でもあり、研究所の転期であったと言ってよいのでしょう。

そこで、それまで研究所が積み重ねてきた異文化コミュニケーション研究の流れは、2002年に「多文化関係学会」を創設することで自立を図り、他方、学外との共同研究や学内での研究支援、学生との協働などを始める中から新たな試みを重ねましたが、研究所の改組に時間を要したこともあって、時代の変化の意味は十分に咀嚼しきれなかったように感じます。グローバルな変化はあまりにも急速で、そのインパクトは想像をはるかに超えて広く深かったがゆえに、認識は常に後追いになっていたということだったのでしょう。

そして、そうした状況は、今日、さらに加速化され、ますます複雑化してきているように思えます。今や、トランスナショナル/トランスカルチュラルtransnational / transculturalな相互作用interactionをより緻密に問う必要も出てきました。 そうした中で、異文化コミュニケーション研究所からグローバル・コミュニケーション研究所へ改組された意味は大きく、やや遅ればせとはいえ、これから必要とされる研究への大きな足掛かりとなることは間違いありません。

今後の研究所の活躍に期待します。

古田暁

神田外語大学名誉教授
異文化コミュニケーション研究所初代所長

久米昭元