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講演「カナダのマリファナ問題」が開催されました

2014.11.04
神田外語大学
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講演タイトル:「カナダのマリファナ問題:1960年代から続く熱い議論」
 
日時:10月14日(火)15:10~16:40
会場:4号館3階301教室
講演者:マルセル・マルテル氏(Marcel Martelカナダ・ヨーク大学教授)
使用言語:英語(日本語による解説・通訳あり)
司会・解説・通訳:矢頭典枝先生(英米語学科准教授、グローバル・コミュニケーション研究所副所長)
※「カナダ研究入門Ⅰ」の授業の枠内で講演

主催:本学グローバル・コミュニケーション研究所

マルセル・マルテル教授の略歴

カナダ・ケベック州ケベック市出身。オンタリオ州ヨーク大学で博士号取得(歴史学)。現在、ヨーク大学歴史学部教授。専門分野は、フランス系カナダ史、1960年代の若者文化、カナダにおけるマリファナ問題研究、国家による反体制文化監視に関する研究。

講演主旨

カナダでは、マリファナは健康に無害だと信じる人が多いが、マリファナ使用は違法となっている。神経痛や筋肉痛による痛み止めとしてマリファナを自宅で栽培した人が有罪となった事件が最近報じられている。

マリファナ使用がカナダで違法なのはなぜか。第一の理由として、強大な隣国アメリカ合衆国が、カナダからのマリファナ、中南米のコロンビアやメキシコからのコカインなどの強い薬物が国内に流入するのを阻止する政策を打ち出していることが挙げられる。2002年にカナダ連邦政府がマリファナの使用を犯罪の枠から外す(decriminalize)勧告を出したことに対し、アメリカは猛烈に批判した。第二に、カナダは1912年の「ハーグ国際アヘン条約」締結以降、薬物の製造と普及を禁止あるいは制限する数々の国際条約を締結しているため、容易にマリファナを合法化できないという事情もある。

自国の体制に不満を持つアメリカの若者たちがカナダに流入し、カナダの若者たちと共に「ヒッピー文化」を繁栄させた1960年代、カナダではマリファナ使用者が増加し、自宅でマリファナを栽培する若者も後を絶たなかった。また、医療関係者は、マリファナの使用は癌や神経痛など痛みが強い病気の治療として利用できると主張していた。他方で、子を持つ国民たちや学校関係者、宗教団体はマリファナを健康と社会価値に悪影響を及ぼすものと認識し、こうしたカナダ国内の状況について危惧を表明し、政府に何らかの対策を講じるよう要求した。

これを受けて、カナダ連邦政府は1969年、「医療目的以外のドラッグ使用に関する諮問委員会」を立ち上げた。その勧告は、マリファナ使用を違法とするが、違反者に対しては禁固刑ではなく罰金など軽い処罰にとどめる、という曖昧なものであった。

1990年代より医療目的でのマリファナ使用を肯定する動きが強まり、2001年、カナダ厚生省(Health Canada)は「マリファナ医療アクセス規則(Marihuana Medical Access Regulations)」を打ち出した。これは医療目的で、医師の許可を得た患者のみがマリファナを使用することを認めるものであった。しかし、マリファナの使用は連邦法(Controlled Drugs and Substances Act (1996年制定))により依然として違法である。

他方、アメリカ合衆国でもマリファナ使用をめぐる動きに変化がみられ、2014年現在、15州で医療目的でのマリファナ使用が合法化され、コロラド州とワシントン州ではマリファナ使用は全面的に合法化されている。隣国のこうした動きがカナダにどのように影響するだろうか。カナダでは、国政選挙が来年実施される見込みであるが、マリファナ使用にどちらかといえば肯定的な自由党が勝利すれば、新たな展開が見られるかもしれない。

本講演開催の意義

本講演では、カナダにおける1960年以降のマリファナ問題に関する世論の変遷を歴史的に概観し、カナダ連邦政府のマリファナに関する公共政策をアメリカ合衆国政府のそれと比較し、カナダの学校教育で実際に行われているマリファナ問題に関する意識教育についても触れた。

日本では、ここ数年いわゆる「脱法ハーブ」使用者が相次いで事故や事件を引き起こしたことを受け、その名称を国民に公募した結果、「危険ドラッグ」に変えたことは記憶に新しい。

カナダではマリファナ使用が違法であるとはいえ、カナダに留学、あるいは旅行する日本人は、実際にはカナダ国内のいろんな場所でマリファナを楽しむ人々に遭遇することはある。本学の学生も例外ではない。本講演では、「カナダではマリファナ使用は違法である」、「マリファナをはじめとするドラッグを使用した場合、罪に問われることになる」、「外国人がカナダで罪に問われる、ということは、カナダから強制送還され、カナダに二度と入国できなくなる」といったことが強調され、「健康に無害だといわれるマリファナから、より危険なドラッグに走る者が多い」といった危険性について論じられた。

日本の学校において、薬物乱用防止に関する教育の更なる充実が図られようとする中、本公演でマリファナ問題を取り上げ、カナダにおける議論を整理し、その危険性について問題提起したことは意義深い。

講演会の様子

マリファナについての知識を全くもたない多くの学生は、熱心にマルテル先生の話に聞き入っていた。

講演後の質疑応答では、学生から英語による質問が2つと日本語による質問が1つ尋ねられた。その1つは、モントリオールに留学した学生からの質問で、「マリファナが違法なら、何故そこらへんでマリファナを吸っている人たちが捕まらないのか」というものであった。

これに対し、マルセル先生は「おかしなことに、カナダではマリファナの使用よりも煙草の喫煙の方が厳しく取り締まられている。確かに、カナダの警察は、マリファナの常習犯でなければ見逃す傾向があるが、マリファナの使用はカナダでは違法であることをしっかり認識してほしい」と回答した。



矢頭典枝

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