外国語との出会いと異文化経験

私が初めて外国語と向き合ったのは、9歳の時に父の仕事の関係でニューヨークに3ヵ月滞在した時でした。その時に、言葉ができないとどうしようもないことを肌で感じました。小学生の体験が、外国語を学ぶきっかけになり、海外への興味に繋がりました。
上智大学外国語学部を卒業後、現みずほ銀行の銀行員としてドイツに5年、イギリスに15年勤務しました。異文化に触れることは、日常茶飯事でした。イギリスでは、お昼にパブでビールを飲む文化がありますが、日本人はちょっと躊躇します。働き方にも違いがあり、ドイツでは、個人の役割がはっきりしていて、とても効率よく働いていると感じることが多かったですが、逆に柔軟性がないと感じることもありました。イギリスでは、同僚も良く言っていましたが、「There is no such thing as perfect.」という具合に、完璧を求めず、物事の大きな幹の部分を考える分、細かい枝の部分は気にしないので、軌道修正が必要なときは多かったです。細かいところまで詰め、“満点”や“完璧”を求める日本的な考え方をすると、相手からはよく思われなかったかもしれません。
たくさんの異文化の経験を積みながら、相手の立場で考えるようになり、自分も物の考え方や見方が変わっていきました。

“当たり前”を見直す

相手の言っていることが聞き取れなかった時、「Pardon?」や「Pardon me?」と聞き返すのが、一般的だと思います。しかし、国際ビジネスの場では、こればかり使っていると、相手をいらいらさせてしまうことが多かったんです。そこで、「Are you saying ~?」と相手が言っていることを復唱するようないい方に言い換えるということも、コミュニケーションのスキルとして学びました。
異文化に出会ったときに、それを“壁”と捉える方が多くいるかと思います。ですが、“壁”と捉えるのではなく、私は“違い”として楽しむよう意識しました。自分にとっての当たり前は、相手にとって必ずしも同じとは限りません。意見や感性は異なるのが当たり前です。発想を変えていくことが大事です。

Q&Aから構成するプレゼン

私が経験したプレゼンでの一番苦い思い出は、プレゼンを終えたあとの質疑応答で自分の知らないことを聞かれた時でした。その時のプレゼンの内容とは関係のなかった、破産法についての質問をされた時は、本当に苦しかったですね。それでも、プレゼンの機会はたくさんあったので、やっていくうちに対処法も学んでいきました。たとえば、グループでのプレゼンであれば、Q&Aの時間内に、仲間内に調べてもらって、あとから回答する方法。質問をした以外の聴衆の人に意見を求めてみると、意外とコメントをたくさんくれる人も多くいて、逆にまわりを巻き込んでしまう方法も修得しました。
かなり多くのプレゼンをしてきましたが、大変面白い経験をしたのが、イギリスでのプレゼンの1つです。ロンドンで投資家向けのプレゼンテーションを、ニューヨークのチームとやる機会がありました。プレゼンを作る際に、アメリカ人の同僚が、まずQ&Aから取り掛かったんです。そして、プレゼンに関する100以上の質問を私に送ってきて、「これをすべて答えてくれ」と。私も驚いて思わず、「なんだよこれ」といってしまったくらいです。すると同僚は、「この質問は聴衆が知りたいことだから、それをまず調べよう。そして、すべての答えを作り、それをプレゼンに仕立てていこう。そうすると同時にQ&Aも準備ができるようになるんだ」と、教えられました。実際のQ&Aで質問をさせないくらい、すべてを網羅している内容の濃いプレゼンを目指す方法の1つになります。

伝える欲を持つこと

ひょんなことから、金融と英語入門に関する執筆をしたところ、大学からの講演依頼が増え、大学生と話す機会が増えました。そこで感じたのが、“伝えていかなくてはならないもの”があるということです。これまでにも、海外で働く日本人をたくさん見てきて、実力はあるのに悔しい思いをしている人などに、私自身の失敗談やコミュニケーションの仕方を次の世代に伝えていきたいと思い、教育者の道を選びました。
大切なのは、物事に対して自分の意見を持ち、それを相手に伝えたいという欲を持つこと。そして、それを英語でも表現できるようになることで、考えや想いを伝えられる範囲が広がります。これは、場数を踏まないと上達はしません。“伝える”ということに、強欲になってみてください。